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映画紹介 1122本。1日1本(毎日じゃありません)ネタバレは極力無し。TBはご自由にどうぞ。
by syosei7602
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一命
一命_d0030824_1473820.jpg『HARA-KIRI:DEATH OF THE SAMURAI』
日本/2011
監督:三池崇史
出演:市川海老蔵 瑛太 満島ひかり 竹中直人
青木崇高 新井浩文 波岡一喜 天野義久
大門伍朗 平岳大 笹野高史 中村梅雀
役所広司




公開時コピー
いのちを懸けて、問う―
なぜ男は、切腹を願い出たのか―。世界を圧倒した衝撃の超大作。


62年に小林正樹監督によって「切腹」のタイトルで映画化され、傑作と言われた滝口康彦原作の「異聞浪人記」、2度目の映画化。
監督は「十三人の刺客」から、手堅く時代劇を撮っている三池崇史が、切腹の痛みを視覚的にわかりやすく、そして侍の生き様と体制批判を見事に映像化している。
主演は本作が映画初主演となる市川海老蔵。
最新の3Dカメラで撮影されているが、2D版も同時公開されている。
音楽は坂本龍一。

<あらすじ>
関ヶ原の戦いが終わり、天下太平となった江戸時代初頭。
井伊家の江戸屋敷に津雲半四郎(市川海老蔵)という浪人がやってくる。半四郎の目的は、井伊家の庭を借りて切腹したいというものだった。
家老の斉藤勘解由(役所広司)は、半四郎を招き入れて切腹の真意を問いただす。
半四郎は元広島藩・福島正則の家臣だったものの、城の無断修理が元で藩が取りつぶされ浪人になり、死に場所を求めていたと言う。
経緯を聞いた斉藤は、数ヶ月前にやってきた若浪人・千々岩求女(瑛太)がいたことを告げ、彼の最後を語り始める。
求女もまた、元広島藩の出であり、同じく切腹場所に井伊家を選んだという。しかし、それが庭先を汚されたくない大名屋敷から金品をせしめる狂言切腹であったことを、井伊家の家臣・沢潟(青木崇高)が見抜く。
井伊家では狂言切腹が通用しないことを知らしめるため、求女は壮絶な最期を迎えるが…。
一命_d0030824_1494158.jpg

<総評>
三池監督が再びリメイクを手がけたのはやはり時代劇。「十三人の刺客」の凄まじい殺陣を撮った同監督は、
今度は実に静かにして残酷な本作を見事に撮っています。
舞台は名家・井伊家の江戸屋敷…徳川幕府の時代では幕末に暗殺された井伊直弼が有名ですが、初代藩主・井伊直政が組織した赤備えは徳川家麾下としては屈指の精鋭部隊として活躍しました。
その赤備えのイメージは本作の舞台でもある屋敷の中でも、印象的に使われています。
さて、藩を取りつぶされて浪人たちが哀れを乞い、金品を貰う狂言切腹…つまり、切腹するために庭先を貸してくれと名家に押しかけ、思いとどまるよう説得されてお金を貰う行為なわけです。
ところが井伊家に来た若浪人の求女は実際に切腹させられるわけですが、その切腹がえげつない。
困窮故にあっさりと切腹できないむなしさと痛み、そして狂言切腹をする浪人達に情をかけない井伊家の家臣。武士とは、生き恥を晒すなら潔く死ぬことなのか、それとも無様でも生き続けることなのか…江戸時代の社会の縮図とも言うべき本作は、仕えなくても武士として生きねばならない悲哀に満ちています。
そして、武士の本質を全うするためにやってきた半四郎の意図が徐々に明らかになるにつれ、本作の本質がじわりとにじみ出てくる。
これほどまでに静かに狂気に満ち、さらに生きることを、三池監督が撮ったことに実は驚きました。
市川海老蔵は圧巻、瑛太は迫真、そして役所広司は卓越というべきか…そこに切なさと悲劇を加えるのが満島ひかりでしょうか。
さらに狂気といえば、青木崇高のふてぶてしい演技は見事。
ただ、贅沢を言えば市川海老蔵は孫を持つには若すぎる風貌でしょうか。
落ち着いた佇まいは見事ですが、もっと老けメイクをがんばって欲しかったところです。
それにしても、三池作品は「十三人の刺客」もそうですが、時代考証にかなりこだわっていますね。
下手したら大河ドラマよりもがんばっているかも。
クライマックスは見事…時代劇ならではのおもしろさを実感できる作品です。

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by syosei7602 | 2011-10-25 01:45 | 戦争/歴史/時代劇
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