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映画紹介 1122本。1日1本(毎日じゃありません)ネタバレは極力無し。TBはご自由にどうぞ。
by syosei7602
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狼たちの午後
狼たちの午後_d0030824_0351689.jpg『DOG DAY AFTERNOON』 アメリカ/1975
監督:シドニー・ルメット
出演:アル・パチーノ ジョン・カザール チャールズ・ダーニング
    ジェームズ・ブロデリック クリス・サランドン ペニー・アレン
    キャロル・ケイン サリー・ボイヤー ランス・ヘンリクセン
受賞:アカデミー賞/脚本賞(1975)
    LA批評家協会賞/作品賞・男優賞・監督賞(1975)他

公開時コピー
暑い夏の昼下り 全米の注視をうけて演じられた-あまりにも突飛な事件…だがそれはまぎれもない事実だった!

ニューヨークで実際に起きた銀行強盗事件を基に製作された社会派ドラマ。
監督は「グロリア」(1999年)のシドニー・ルメット。
出演は「リクルート」のアル・パチーノ、「ゴッドファーザー」のジョン・カザール、「トッツィー」のチャールズ・ダーニングなど。

<あらすじ>
1972年ニューヨーク。
うだるような暑さの夏の午後2時57分、閉店間際のブルックリン三番街のチェイス・マンハッタン銀行支店に3人組の強盗が押し入る。
人質を取ったところで1人は怖じ気ついて逃げ出す。残ったのはソニー(アル・パチーノ)、サル(ジョン・カザール)の2人、そして人質の支店長、警備員、女性行員の9人。
10分もあれば済む筈だったが、金庫の金は既に本店へと運ばれたあとで残りはわずか1100ドルだった。予想外の事に落胆するソニーに追い打ちをかけるかのように、いつの間にか警察に包囲されている始末。
集まる報道陣、警官隊、そしてFBIが到着する中、ニューヨーク市警のモレッティ刑事(チャールズ・ダーニング)がソニーに投降を呼びかける。
しかし、ソニーは籠城を決め込み、とりあえずの交渉への証として喘息持ちの老警備員を解放するが、警察は間違えて警備員を逮捕してしまう。
ソニーはそれに乗じてアティカ刑務所の暴動を持ち出し、群衆を煽るのだった。
やがて人々は彼をダーティーヒーローとして受け入れ始める。さらに時間が経つにつれ、ソニー達と人質に奇妙な連帯感が芽生え始めていた。

<作品解説>
実際に起きた事件を基に、人間心理の描写を巧みに描いた傑作です。
押し入る3人の強盗、1人は逃げだし、残った2人には金すら無くなぜか警察に包囲されて策は無し。計画があるようで実は無かった銀行強盗と人質、警察、報道、群衆の長い半日が始まります。
警察による警備員誤認逮捕が決め手となり、群衆を味方に付けたソニー、警察に対して諦観的になった行員達はいつしか連帯感(ストックホルム症候群)が生まれます。
実はソニーは小心者で、相棒のサルは人付き合いが苦手な無口な男で、さらに知恵もそれほどあるわけでもない。
この2人をうまく誘導するのが支店長なわけで、警察が強盗を察知した理由は語られないものの流れとしては支店長以外おらんやろう、と思えます。
本作の根幹にあるのは、先にも書いたように人間心理であり、どうにか逃げ出そうとするソニー達の焦りに反して、若干怯えながらも環境に順応してしまう行員や権力に逆らう者への羨望の眼差しを向ける群集心理の巧みさが見事なのです。
また警察側は、それらの世論を敵に回してしまったためソニー達の為すがまま。
どうにもならない状況下、事件はクライマックスで意外な結末を迎えます。
でも、このラストって非常に切ないですね~。

<見どころ>
アティカ刑務所の名を出して群衆を煽るアル・パチーノが最高にカリスマパワー全開で格好いいんですよ(ちなみにアティカ刑務所は差別と囚人待遇の悪さから暴動が起き、政府が強制的に鎮圧、多数の死者を出したことを隠蔽した為にあちこちの刑務所で暴動が続発した)。
相棒サルを演じるジョン・カザールのとぼけっぷりもさながら、実は本作の見どころは意外なところに隠れているユーモアセンスなんですね。
まあ、ブラックジョークの一歩手前ですが。

<出演者>
なんといっても若き日のアル・パチーノの格好良さ。
役柄としてはマヌケですが、やっぱりねいいんですよ、この人は。
相棒サルを演じたジョン・カザールは既に亡くなってしまいましたが、この人も味があります。
得体の知れない感じが見事。
端役でランス・ヘンリクセンも出ていますが、本作では残念ながら売れなかったようです。

ノンフィクションベースということで、どうもダラダラと説明的な作品と思い浮かべてしまいがちですが、本作は緩急を付けた見事な作りとラストまでの緊張感は素晴らしく、また俳優達が演じる役柄が生き生きとしています。
すでに30年前の作品ですが、今見ても面白い傑作です。

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by syosei7602 | 2007-02-20 22:46 | ノンフィクションベース
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