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映画紹介 1122本。1日1本(毎日じゃありません)ネタバレは極力無し。TBはご自由にどうぞ。
by syosei7602
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ノルウェイの森
ノルウェイの森_d0030824_27234.jpg『NORWEGIAN WOOD』 日本/2010
監督:トラン・アン・ユン
出演:松山ケンイチ 菊池凛子 水原希子 高良健吾 霧島れいか
初音映莉子 柄本時生 糸井重里 細野晴臣 高橋幸宏
玉山鉄二



公開時コピー
深く愛すること。
強く生きること。


1987年に発表され、国内1位となる累計発行部数1000万部を超えた村上春樹の同名小説の実写化。
監督は「アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン」のトラン・アン・ユン。
出演は「カムイ外伝」の松山ケンイチ、「サイドウェイズ」の菊池凛子、デビューとなる水原希子、「ソラニン」の高良健吾、「リアル鬼ごっこ2」の霧島れいか、「BOM!」の初音映莉子、「シーサイドモーテル」の玉山鉄二など。
主題歌はビートルズの「ノルウェーの森」、サントラを手がけたのはレディオヘッドのジョニー・グリーンウッド。

<あらすじ>
ノルウェイの森_d0030824_271463.jpg学生運動まっただ中の東京。
高校時代に親友のキズキ(高良健吾)を自殺で失ったワタナベ(松山ケンイチ)は、誰も知らない東京で大学生活を始めていた。住み始めた学生寮で年上の永沢(玉山鉄二)という男と知り合い、彼に連れられて女の子をナンパして孤独を埋める日々。
そんなある日、ワタナベはキズキの幼なじみで恋人だった直子と再会する。ワタナベはキズキと直子と一緒に遊ぶことが多かったのだ。
同じ傷を持つ2人は互いに惹かれあっていくが、ワタナベの想いが深まるほどに直子の喪失感は深まっていく。そして、直子の20歳の誕生日に一夜を共にするがその日を境に彼女は消えてしまう。
一方、ワタナベは大学で同じ講義を受けていたノルウェイの森_d0030824_273221.jpg緑(水原希子)という女の子と知り合いになる。彼女の持つ生命力に溢れた行動に、直子とは別の形で惹かれていくが、直子の状態を気に掛けていた。
ほどなくして直子からの手紙を受け取ったワタナベは、彼女が京都の療養所にいることを知る。
そして夏にようやく彼女と会えることになった彼は、ひとり京都へ向かうのだったが…。

<作品解説>
毎年ノーベル文学賞の候補にもあがる村上春樹の小説の中で、最大のベストセラーとなった「ノルウェイの森」。今回の実写化については、村上春樹自身が元々映像化を拒んでいたこともあり、まさに奇跡的な事といえます。されど、ファンが多い故(それが村上春樹のファンであるハルキストなのか、「ノルウェイの森」のみのファンなのかは難しいところ)、そのキャスティングについては未だに賛否両論といったところでしょう。
また、上下巻の長さをどこまで詰め込めるのか、叙情的かつ官能的な映像に定評があるトラン・アン・ユン監督の手腕が問われるところとなりますが、感想を言えば少し物足りないかもしれません。
さて、物語は主人公ワタナベが親友のキズキを失い、誰も知らない東京でほぼ孤独に生活しているところから始まります。
彼の理解者とも言えるのは、東大に通う金持ちで頭がよく、男前の永沢という人物のみ。この永沢は自らの人生を割り切り、幸せがどうとかを考えるような人物ではなく、ある意味破綻した俗物として描かれています。
ワタナベの周囲には直子、緑、そして直子を通して出会ったレイコ、永沢の恋人であるハツミが登場します。
彼女たちはそれぞれに問題を抱えており、直接的に、あるいは間接的に誰かに何かを求めているわけです。
ワタナベ自身は、自らを振り返ることが出来ず、結局直子を通してでしか過去を見られない、そして直子自身を愛そうと努力しながらも、それをある瞬間に人としての義務だと言い切ってしまう。
ストーリー全体を通して、ワタナベはあるラインまで客観的であり、そのラインを超えた瞬間に主観的な人物になります。
本作は全体的に手堅くまとめられている気はするのですが、どうしてもストーリーのブツ切り感が多く、相対的に見て「原作は必読」という点に集約されています。原作で比較的多く描かれていた突撃隊、レイコの過去、ハツミとのビリヤード、そして緑の重要な言葉が無くなっていました。
原作ファンだけに気になる点は多数…端折るのは仕方ないんですが、ラストの展開までも多少変わってしまったのは残念。
また、音楽が合っていないシーンがあって、個人的にトラン監督の選曲はちょっと気になります。

<見どころ>
映像の美しさはとにかく素晴らしい。また、60年代末期の学生運動の様子や建物内の小物までこだわりが感じられます。
ワタナベと直子が療養所で再会するシーンはゾクッとするほど官能的ですね。

<出演者>
主演の松山ケンイチは、あえて原作と同じセリフで話しているそうです。どこかとらえ所のない話し方で、非現実的…ただし、作品の世界観をうまく表していると言えるでしょう。
菊池凛子ですが、個人的にはやっぱりイメージに合いませんでした。うまいんですが、原作に描かれている雰囲気とは違って見えます。これは緑を演じた水原希子も同様で、読者としてのこだわりで仕方ないかもしれません。
永沢を演じた玉山鉄二は見事にはまっていました。それ以上に凄かったのが、ハツミ役の初音映莉子でしょう。わずかなシーンながらも、女の情念を出し切ったレストランのシーンは怖いほどでした。
もっとも残念だったのがレイコを演じた霧島れいか。原作では直子との決まり事でギターを弾くのですが、レイコの存在は本作でもかなり重要な位置を占めているだけに勿体なかった。
キャスティング云々ではなく、キャラクターの描き方が物足りない。
突撃隊の柄本時生もはまっていただけに、シーンが少なく残念でした。

<総評>
珍しく前売り券を買って見に行ったのですが、感想としてはもう少しストーリーを練られたんじゃないかな、と…。色々と重要なシーンが抜けていたのも気になりますが、映画としての体裁を考えるなら限界がありますね。ただ、映画のストーリーはあくまでもワタナベ、直子、緑の物語に限定され、その中で描かれる生と死は非常に見事です。
個人的には音楽の使い方が気になりますが、心理を描写したという点では良かったと言えるでしょう。
原作が有名なだけに、結局はうまくはまるかはまらないか…これ以上に映像化するとなると、おそらく3時間くらいの作品にしなければならないと思います。
あえて言うならば、あくまでも原作小説ありきで考える人にはオススメできません。
原作を考えずに見るなら、ラブストーりーの及第点と言えます。

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by syosei7602 | 2010-12-12 23:59 | 恋愛/青春/スポーツ
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